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JRAヒーロー列伝のキャッチコピー一覧。歴代名馬98頭とコピーの意味を考察
競馬ファンの記憶に残る名馬と、その馬をわずかな言葉で表現したキャッチコピー。
JRAが1981年から制作している「ヒーロー列伝」には、シンザン、オグリキャップ、トウカイテイオー、ディープインパクト、キタサンブラック、イクイノックスなど、日本競馬史を彩ってきた名馬たちが登場しています。
「ありがとう。」
「帝王は、皇帝を超えたか。」
「愛さずにいられない。」
「そして、みんなの愛馬になった。」
馬の名前を聞くだけでレースが思い浮かぶように、キャッチコピーを見ただけで一頭の競走馬を思い出す人もいるのではないでしょうか。
このページでは、歴代のJRAヒーロー列伝に登場した競走馬とキャッチコピーを一覧で紹介。
さらに、単にコピーを並べるだけではなく、競走成績や馬名の由来、血統、関係者との物語などから、
「なぜ、この馬にこの言葉が選ばれたのか?」
を考えていきます。
なお、キャッチコピーの意図についてJRAから公式な説明が示されていないものについては、当時の状況や競走成績などをもとにした当サイト独自の考察です。
また、ヒーロー列伝は現役中に制作されることもあります。その場合、ポスター制作後の活躍は当然ながらコピーには反映されていません。
後世からその馬の生涯を振り返るだけでなく、「ポスターが作られた当時、その馬がどんな存在だったのか」という視点も交えながら見ていきます。
JRA「ヒーロー列伝」とは?
ヒーロー列伝は、JRA(日本中央競馬会)が1981年から制作している競走馬のポスターシリーズです。
第1号はハイセイコー。
その後、時代を代表する名馬たちが選ばれ、2025年に制作されたレモンポップでNo.98となっています。
初期の作品には複数の馬に共通するメッセージが使われているものもありますが、次第に一頭一頭の個性や競走生活を短い言葉で表現したキャッチコピーが定着していきました。
ここからはNo.1から順番に見ていきましょう。
No.1 ハイセイコー
キャッチコピー:僕のあいつも、いつの日かヒーロー。
地方の大井競馬から中央へ移籍し、競馬の枠を超えるほどの人気を獲得したハイセイコー。
「地方からやってきた怪物」は、それまで競馬に興味がなかった人々まで競馬場へ向かわせる国民的アイドルになりました。
第1号のヒーロー列伝に使われたこの言葉は、ハイセイコーだけを表現したものというより、「自分が応援している馬も、いつかヒーローになる」というシリーズ全体の原点とも受け取れます。
No.2 タケホープ
キャッチコピー:僕のあいつも、いつの日かヒーロー。
1973年の日本ダービーと菊花賞、翌年の天皇賞(春)を制したタケホープ。
同世代には国民的人気を誇ったハイセイコーがいましたが、そのハイセイコーを大舞台で破ったのがタケホープでした。
人気だけがヒーローの条件ではない。応援する人それぞれに「自分のヒーロー」がいるという、初期ヒーロー列伝らしいメッセージです。
No.3 タイテエム
キャッチコピー:僕のあいつも、いつの日かヒーロー。
端正な馬体から「貴公子」と呼ばれながら、大きなタイトルになかなか届かなかったタイテエム。
それでも挑戦を続け、1973年の天皇賞(春)で念願の八大競走制覇を果たしました。
すぐに頂点へ立つ馬だけではなく、応援し続けた馬がついに大舞台を勝つ。そんな競馬の喜びにも重なる言葉です。
No.4 カツラノハイセイコ
キャッチコピー:ヒーロー誕生の条件は、僕らの声援だ。
父は初代ヒーロー列伝のハイセイコー。
その父が勝てなかった日本ダービーを、息子カツラノハイセイコが1979年に制しました。
父から子へ受け継がれた物語と、世代を超えて名馬を応援する競馬ファン。「僕らの声援」という言葉がよく似合います。
No.5 ホウヨウボーイ
キャッチコピー:ヒーロー誕生の条件は、僕らの声援だ。
脚部不安などもあり、クラシックとは無縁だったホウヨウボーイ。
しかし古馬になって本格化し、有馬記念、天皇賞(秋)を制覇。2年連続で年度代表馬に選ばれました。
エリート街道を歩まなくても、走り続けることでヒーローになれる。そのことを体現した一頭です。
No.6 マルゼンスキー
キャッチコピー:ヒーロー誕生の条件は、僕らの声援だ。
8戦8勝。
圧倒的な能力を持ちながら、当時の制度によってクラシックに出走することができなかったマルゼンスキー。
「賞金はいらない。他の馬の邪魔もしない。大外枠でもいいからダービーに出させてほしい」とまで語られた逸話は有名です。
ダービーを勝たなくても、その強さを目撃したファンの記憶によって伝説になった馬でした。
No.7 テンポイント
キャッチコピー:流星の貴公子
額を走る美しい流星、端正な馬体、そして華のある競走ぶり。
テンポイントの代名詞そのものともいえる「流星の貴公子」がコピーになっています。
トウショウボーイ、グリーングラスと「TTG」の時代を築き、1977年有馬記念ではトウショウボーイとの壮絶な一騎打ちを制覇。
その後の悲劇まで含め、日本競馬史で特別な存在であり続けています。
No.8 キタノカチドキ
キャッチコピー:ヒーロー誕生の条件は、僕らの声援だ。
皐月賞と菊花賞を制した1974年の二冠馬。
15戦11勝という高い勝率を残し、同世代を代表する存在でした。
初期シリーズ共通の「僕らの声援」という言葉には、競走成績だけでなく、ファンが馬を語り継ぐことでヒーローが生まれるという意味も感じられます。
No.9 モンテプリンス
キャッチコピー:太陽の帝王。
モンテプリンスには、もともと「太陽の王子」という異名がありました。
その由来とされるのが、極端ともいえる馬場適性です。
モンテプリンスは蹄の形などの問題から道悪を大の苦手としており、雨で馬場が悪化すると本来の能力を発揮できない一方、良馬場では高い能力を見せました。
つまり、雨ではなく「太陽」が似合う馬だったのです。
そして、もう一つ注目したいのが「王子」から「帝王」への変化です。
日本ダービー2着、天皇賞(秋)2着、有馬記念3着など、大舞台であと一歩届かない競馬が続いたモンテプリンスでしたが、1982年には天皇賞(春)を制覇。さらに宝塚記念も勝利しました。
No.10 シンザン
キャッチコピー:最強の戦士。
1964年に史上2頭目のクラシック三冠を達成。
さらに天皇賞(秋)と有馬記念も勝ち、「五冠馬」と呼ばれました。
生涯19戦15勝、2着4回。一度として連対を外していません。
「最強」という言葉には議論がつきものですが、シンザンについては余計な装飾をせず「最強の戦士。」と言い切る。そのシンプルさ自体が強烈です。
No.11 アンバーシャダイ
キャッチコピー:めざせ、世界のNo.1
有馬記念、天皇賞(春)を制し、長く一線級で活躍したアンバーシャダイ。
この時代、日本競馬にとって「世界」は現在よりはるかに遠い存在でした。
国内の名馬を称えるだけではなく、その先にある世界を意識した言葉には、日本競馬そのものが次の時代へ進もうとしていた空気も感じられます。
No.12 ヒカリデユール
キャッチコピー:栄光の数よりも、栄光への道のりが、人生を語る。君は、ヒカリデユール。
地方競馬を経て中央へ移籍し、1982年の有馬記念を制覇。年度代表馬にまで上り詰めたヒカリデユール。
最初から中央競馬のエリートだったわけではありません。
だからこそ重要なのは「いくつ勝ったか」だけではなく、そこへ至るまでの道のり。
ヒカリデユールの競走人生そのものを物語として表現した、初期ヒーロー列伝屈指の長いコピーです。
No.13 トウショウボーイ
キャッチコピー:天馬、空をゆく。
圧倒的なスピードから「天馬」と呼ばれたトウショウボーイ。
テンポイント、グリーングラスとともに「TTG」と呼ばれ、一時代を築きました。
「天馬」という異名をそのまま生かしながら、地面を走るというより空を駆けていくようなスピード感まで表現したコピーです。
No.14 ミスターシービー
キャッチコピー:ターフの偉大なる演出家よ。
1983年、シンザン以来19年ぶりとなるクラシック三冠を達成。
しかしミスターシービーの魅力は、単に三冠を勝ったことだけではありません。
後方から豪快に追い込み、菊花賞ではレース途中から一気に前へ進出。常識に収まりきらないレースを何度も見せました。
「勝者」ではなく「演出家」。
何が起こるのか分からないワクワクまで含めて、ミスターシービーを表した言葉でしょう。
No.15 エリモジョージ
キャッチコピー:人呼んで、気まぐれジョージ。
能力はある。しかし、いつその能力を発揮するか分からない。
そんな気性の難しさから「気まぐれジョージ」と呼ばれたエリモジョージ。
人気薄で大レースを勝ったかと思えば、期待されたレースで敗れることもある。
「強い」「速い」ではなく、そのつかみどころのなさをそのまま魅力にしてしまったコピーです。
No.16 キョウエイプロミス
キャッチコピー:世界に手をかけた勇士。
1983年のジャパンカップ。
日本馬がまだ外国の強豪に苦戦していた時代、キョウエイプロミスは外国馬スタネーラと激戦を繰り広げ、わずかな差の2着に入りました。
勝利には届かなかった。
それでも「世界に通用するかもしれない」と日本の競馬ファンに感じさせた走りは、まさしく「世界に手をかけた」瞬間でした。
No.17 シンボリルドルフ
キャッチコピー:勝ち方を極めたい。
日本競馬史上初の無敗の三冠馬。
後にGI級競走7勝を挙げ、「皇帝」と呼ばれました。
このコピーがすごいのは「勝ちたい」ではないところ。
勝つこと自体を当然とするかのように、その先にある「どう勝つか」を求めている。
シンボリルドルフの絶対王者としての存在感を見事に表しています。
No.18 カツラギエース
キャッチコピー:翔馬。
1984年ジャパンカップ。
外国馬が優勢だった時代に、日本馬として初めてこの国際競走を制したのがカツラギエースでした。
逃げて世界の強豪を完封。
「翔馬」というわずか二文字には、日本馬が世界へ羽ばたいた歴史的な勝利まで重なって見えます。
No.19 ニホンピロウイナー
キャッチコピー:Mile Champion
マイルチャンピオンシップ連覇、安田記念制覇。
まだ短距離・マイル路線の体系が整備されて間もない時代に、そのカテゴリーの絶対的な王者として君臨しました。
余計な説明をせず「Mile Champion」。
日本競馬に「マイル王」という価値を定着させた一頭だからこそ成立するコピーです。
No.20 メジロラモーヌ
キャッチコピー:Queen of 1986
1986年、桜花賞、オークス、エリザベス女王杯を制覇。
史上初めて牝馬三冠を達成したメジロラモーヌ。
しかも各三冠競走の前哨戦まで勝利するという完璧な歩みでした。
「1986年の女王」。
これ以上説明する必要がないほど、その年の牝馬戦線を支配した存在でした。
No.21 ヤマノシラギク
キャッチコピー:すべての競馬場で走り、そして最後は秋の淀で自分らしい花を見事に咲かせたね……。
長い現役生活を送り、全国の競馬場を駆け巡ったヤマノシラギク。
馬名にある「シラギク=白菊」と、最後に京都=淀で花を咲かせた競走生活を重ねています。
「勝った」「強かった」だけではない、一頭の馬を長く見守ってきた人からの手紙のような温かさを感じるコピーです。
No.22 ミホシンザン
キャッチコピー:父の血。
父は五冠馬シンザン。
その偉大な父の産駒として皐月賞、菊花賞、天皇賞(春)を制したミホシンザン。
わずか三文字ですが、「シンザンの子」という期待と重圧、そして実際にGI級競走を勝って血の力を証明した競走生活まで凝縮されています。
No.23 サクラスターオー
キャッチコピー:天に舞え。
1987年の皐月賞と菊花賞を制した二冠馬。
しかし有馬記念で故障し、長い闘病の末に亡くなりました。
「スター」という馬名と、若くして競馬場を去ったその運命。
「天に舞え。」という短い言葉は、単なる強さを称えるコピーではなく、祈りや追悼の意味まで感じさせます。
No.24 ニッポーテイオー
キャッチコピー:マイルだったら、譲れない。
安田記念、マイルチャンピオンシップを制したニッポーテイオー。
マイル戦線では抜群の強さを誇りました。
「何でも勝てる」と誇張するのではなく、「マイルだったら」と範囲を限定したうえで「譲れない」と言い切る。
専門分野を極めた王者らしいコピーです。
No.25 タマモクロス
キャッチコピー:風か光か
芦毛の馬体で猛烈な末脚を繰り出し、天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)を制したタマモクロス。
白く見える馬体が高速でターフを駆け抜ける。
それは「風」なのか、「光」なのか。
後にオグリキャップとともに「芦毛の怪物」と呼ばれる時代を作ったことを思えば、視覚的にも非常に印象的なコピーです。
No.26 メリーナイス
キャッチコピー:四白 流星 六馬身。
四本の脚に白い部分を持つ「四白」と、顔の「流星」。
そして1987年日本ダービーを「六馬身」差で圧勝。
容姿と最大の勝利を、たった三つの言葉で並べています。
メリーナイスを見たことがない人にも、その姿とダービーの圧勝が浮かんでくるようなコピーです。
No.27 サッカーボーイ
キャッチコピー:弾丸シュートだ。
馬名がサッカーボーイなら、その圧倒的なスピードは「弾丸シュート」。
函館記念では驚異的なレコードを記録するなど、爆発的なスピードを持っていました。
馬名と走りをストレートに結び付けた、分かりやすく勢いのあるコピーです。
No.28 イナリワン
キャッチコピー:ミルリーフの血。
地方・大井から中央へ移籍し、天皇賞(春)、宝塚記念、有馬記念を制したイナリワン。
母系をたどると世界的名馬ミルリーフにつながります。
地方出身という経歴だけでは測れない世界的な名血と、中央で開花した能力。
血統に焦点を当てた珍しいタイプのコピーです。
No.29 オグリキャップ
キャッチコピー:ありがとう。
地方・笠松から中央へ。
数々の名勝負を演じ、競馬ブームの中心となり、最後の有馬記念では誰もが驚く復活勝利。
そんなオグリキャップに対して必要だった言葉は、「最強」でも「怪物」でもありませんでした。
ただ一言。
「ありがとう。」
競走馬とファンの関係をここまで端的に表現したコピーは、ヒーロー列伝の中でも特別な存在でしょう。
No.30 スーパークリーク
キャッチコピー:逆指名。
スーパークリークを語るうえで欠かせないのが、若き日の武豊騎手。
1988年の菊花賞で、人馬ともに大きな飛躍を遂げました。
武豊騎手が菊花賞で騎乗馬を選ぶ際にスーパークリークを選択したことなど、人と馬がお互いを選んだかのような関係性を「逆指名」という短い言葉で表現しています。
No.31 ヤエノムテキ
キャッチコピー:東京の二千に咲いたムテキの舞い。
ヤエノムテキの大きな勲章の一つが、東京芝2000mで行われた1990年天皇賞(秋)。
「ムテキ」はもちろん馬名の「無敵」。
東京の二千メートルという舞台で見せた鮮やかな勝利を「舞い」と表現した、リズムのいいコピーです。
No.32 ダイイチルビー
キャッチコピー:血の瞬発力。
父トウショウボーイ、母ハギノトップレディ。
華麗なる一族と呼ばれる名牝系から生まれたダイイチルビーは、安田記念、スプリンターズSを制しました。
単なる「瞬発力」ではなく「血の瞬発力」。
スピードが突然生まれたものではなく、名血から受け継がれたものだと表現しています。
No.33 メジロライアン
キャッチコピー:本当の強さは、誰も知らない。
クラシックでは惜敗を重ね、有馬記念でもオグリキャップの復活劇の陰で2着。
能力の高さは誰もが認めながら、なかなかGIタイトルに届きませんでした。
そして1991年宝塚記念でついにGI制覇。
勝利数だけでは測れない能力を持つ馬だからこそ、「本当の強さは、誰も知らない。」という少し謎めいた言葉が似合います。
No.34 メジロマックイーン
キャッチコピー:主演作12本。
馬名の由来の一つとなった俳優スティーブ・マックイーンを連想させる「主演作」。
菊花賞、天皇賞(春)連覇、宝塚記念など、長期間にわたって競馬界の主役を務めました。
「12勝」ではなく「主演作12本」。
競走馬としてのキャリアを映画スターの出演作品になぞらえた、非常にしゃれたコピーです。
No.35 ミホノブルボン
キャッチコピー:スパルタの風。
「坂路の申し子」と呼ばれたミホノブルボン。
戸山為夫調教師の徹底した坂路調教によって鍛え上げられ、皐月賞、日本ダービーを無敗で制しました。
血統的な距離不安を猛烈なトレーニングで克服しようとした競走生活。
「スパルタ」という言葉には、その厳しい鍛錬の背景がそのまま表れています。
No.36 トウカイテイオー
キャッチコピー:帝王は、皇帝を超えたか。
父は「皇帝」シンボリルドルフ。
その息子トウカイテイオーは無敗で皐月賞、日本ダービーを制し、「帝王」と呼ばれました。
しかし、その後は度重なる骨折。
そして364日ぶりの実戦となった1993年有馬記念で奇跡の復活勝利を遂げます。
成績だけなら父を超えたとは言い切れない。
けれど、人々の心に残したドラマまで含めたらどうだろう。
だから「超えた。」ではなく、「超えたか。」
答えを競馬ファンに委ねたところまで含めて名コピーです。
No.37 ヤマニンゼファー
キャッチコピー:そよ風、というには強烈すぎた。
「ゼファー(Zephyr)」は英語で「そよ風」を意味します。
しかしヤマニンゼファーは安田記念を連覇し、天皇賞(秋)まで制覇。
その実績は、とても「そよ風」と呼べるような穏やかなものではありませんでした。
馬名の意味を逆手に取り、「そよ風なのに強烈」というギャップを作った秀逸なコピーです。
No.38 ビワハヤヒデ
キャッチコピー:鮮やかに、ひたむきに。
菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念を制覇。
デビューから長期間にわたりほとんど崩れることなく、常に上位争いを続けたビワハヤヒデ。
弟ナリタブライアンの爆発的な強さとはまた違う、堅実で完成度の高い競走馬でした。
「ひたむきに」という言葉が、その安定した競走生活によく似合います。
No.39 ライスシャワー
キャッチコピー:淀を愛した、孤高のステイヤー。
ミホノブルボンの三冠を阻んだ菊花賞。
メジロマックイーンの天皇賞(春)三連覇を阻止。
そして自身二度目の天皇賞(春)制覇。
GI3勝はいずれも京都競馬場でした。
「淀」は京都競馬場を指す言葉。
そして最後のレースとなった1995年宝塚記念も、阪神・淡路大震災の影響で京都開催でした。
ライスシャワーの競走人生を知れば知るほど、「淀を愛した」という言葉が重く響きます。
No.40 ナリタブライアン
キャッチコピー:皐月賞3 1/2馬身、ダービー5馬身、菊花賞7馬身。
説明ではなく数字。
しかしナリタブライアンには、それだけで十分でした。
皐月賞、日本ダービー、菊花賞。
三冠を進むにつれて2着馬との差が「3馬身半→5馬身→7馬身」と広がっていく。
三冠馬であることを説明するより、その着差を並べた方が怪物的な強さが伝わる。
戦績そのものをコピーにした傑作です。
No.41 サクラローレル
キャッチコピー:一緒に見たい夢がある。
故障に苦しみながら復活し、天皇賞(春)でナリタブライアンを破り、有馬記念も制したサクラローレル。
その先にあった大きな夢が、フランス遠征と凱旋門賞でした。
結果として凱旋門賞出走は叶いませんでしたが、「一緒に見たい」という言葉には、馬だけでなく関係者やファンも同じ夢を追うという意味が込められているように感じられます。
No.42 マヤノトップガン
キャッチコピー:マッハの衝撃波。
「トップガン」という馬名から連想される戦闘機。
そして驚異的な末脚。
1997年天皇賞(春)では当時のレコードでライバルたちを撃破しました。
戦闘機が音速を超えたときに生じる衝撃波と、マヤノトップガンの爆発的な走りを重ねたコピーでしょう。
No.43 ヒシアマゾン
キャッチコピー:華やかな闘魂。
外国産馬ゆえに当時のクラシックには出走できなかったヒシアマゾン。
それでも牝馬ながら牡馬の一線級にも果敢に挑み、有馬記念やジャパンカップでも好走しました。
美しく華のある牝馬でありながら、走りは実に力強い。
「華やかさ」と「闘魂」という対照的な二語を組み合わせることで、その魅力を表現しています。
No.44 エアグルーヴ
キャッチコピー:激しく、美しく、燃えさかれ。
1997年天皇賞(秋)を制し、牝馬として年度代表馬に選出されたエアグルーヴ。
「女帝」と呼ばれ、牡馬のトップクラスと互角以上に戦いました。
牝馬らしい美しさだけを称えるのではなく、最初に置かれている言葉は「激しく」。
美しさと激しい勝負根性を併せ持ったエアグルーヴらしいコピーです。
No.45 タイキシャトル
キャッチコピー:世界を制覇した夏。
国内の短距離・マイル路線を席巻したタイキシャトルは、1998年夏にフランスへ。
ジャック・ル・マロワ賞を制し、日本調教馬による海外GI制覇を成し遂げました。
「世界を目指した」ではなく「世界を制覇した」。
実際に海外最高峰のマイルGIを勝ったからこそ使える、誇りに満ちた言葉です。
No.46 スペシャルウィーク
キャッチコピー:王道を歩み続ける強さ。
日本ダービーを制し、古馬になってからも天皇賞(春・秋)、ジャパンカップなどを勝利。
クラシックから古馬王道路線へ。
スペシャルウィークは、その時代の日本競馬で「王道」と呼ばれる舞台を正面から歩き続けました。
一つの得意条件に特化するのではなく、大レースを渡り歩くこと自体を強さとして表現したコピーです。
No.47 グラスワンダー
キャッチコピー:選ばれた夢。
「選ばれた夢」という言葉には、グラスワンダーの天賦の才能だけでなく、「グランプリ」との関係も込められているように思えます。
グラスワンダーは1998年の有馬記念を制覇。
翌1999年には宝塚記念でスペシャルウィークを3馬身差で破ると、暮れの有馬記念でも同馬との歴史的な接戦を制しました。
これで宝塚記念1勝、有馬記念2勝。グランプリ3連覇です。
宝塚記念と有馬記念に共通するのが、ファン投票によって出走馬が選ばれる「ドリームレース」であること。
つまりグラスワンダーは、ファンから「選ばれた」馬たちが集う夢の舞台で、3度続けて頂点に立ったことになります。
No.48 テイエムオペラオー
キャッチコピー:王者の讃歌。
2000年、天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念を含む8戦8勝。
古馬中長距離の主要競走をすべて勝ちました。
「王者」という表現にまったく違和感がないほどの支配。
その後の実績まで含めれば、まさにテイエムオペラオーという王者を讃える「讃歌」となりました。
No.49 ステイゴールド
キャッチコピー:愛さずにいられない。
なかなか勝てない。
それでも大きなレースに何度も出てきて、2着、3着を繰り返す。
勝利数だけでは説明できない人気を獲得したのがステイゴールドでした。
しかも、このポスターが作られた時点では、後に訪れる海外重賞制覇やラストラン・香港ヴァーズでの劇的勝利はまだありません。
勝ったから愛されたのではない。
勝てなくても一生懸命走り続ける姿を、すでにファンが「愛さずにいられなかった」。
制作時点を知ると、さらに味わい深いコピーです。
No.50 メイショウドトウ
キャッチコピー:ターフを揺るがす「怒濤」の力。
「ドトウ=怒濤」をそのまま生かしたコピー。
最大のライバルはテイエムオペラオーでした。
GIで何度も王者に敗れながら挑戦を続け、2001年宝塚記念でついにオペラオーを撃破。
文字通り怒濤のように王者へ挑み続けた競走生活でした。
No.51 アグネスタキオン
キャッチコピー:衝撃の伝説。
わずか4戦4勝。
皐月賞を無敗で制した直後、故障によって現役を引退しました。
特にラジオたんぱ杯3歳Sでは後のGI馬たちを圧倒。
走った期間が短かったからこそ、「実際にはどこまで強かったのか」という想像が現在まで続いています。
完成された歴史ではなく、強烈なインパクトを残して突然終わったからこその「伝説」です。
No.52 クロフネ
キャッチコピー:記録を残した。記憶を刻んだ。
芝のNHKマイルCを制した後、ダートへ。
武蔵野Sを9馬身差で圧勝すると、ジャパンカップダートも7馬身差のレコード勝ち。
その直後に故障し、ダートでの競走はわずか2戦で終わりました。
数字として残る「記録」と、目撃した人の頭から離れない「記憶」。
短いダート生活だったからこそ、二つの言葉が強く響きます。
No.53 ナリタトップロード
キャッチコピー:想いはひとつ、頂点への道
菊花賞馬でありながら、その後はテイエムオペラオーやメイショウドトウらと何度も激突。
勝ち切れないレースも多く、それでも長くGI戦線へ挑戦し続けました。
馬名の「トップロード=頂点への道」と、何度敗れても頂点を目指す競走生活をそのまま重ねたコピーです。
No.54 アグネスデジタル
キャッチコピー:真の勇者は、戦場を選ばない。
芝でもダートでも走る。
中央でも地方でも走る。
日本でも海外でも勝つ。
マイルCS、南部杯、天皇賞(秋)、香港C、フェブラリーS、安田記念。
これほど「条件不問」という言葉が似合うGI馬は珍しいでしょう。
競馬場や馬場を「戦場」に置き換え、「どこでも戦える」ことそのものを称えたコピーです。
No.55 シンボリクリスエス
キャッチコピー:漆黒の帝王
黒鹿毛の雄大な馬体。
そして天皇賞(秋)連覇、有馬記念連覇を達成した圧倒的な実績。
シンボリの名を持つ「帝王」という表現からは、同じシンボリ牧場の「皇帝」シンボリルドルフも連想されます。
見た目の「漆黒」と王者としての「帝王」を組み合わせた、重厚なコピーです。
No.56 ヒシミラクル
キャッチコピー:「奇跡」は、ロングスパートから。
馬名の「ミラクル=奇跡」と、ヒシミラクル最大の武器だった長く脚を使う競馬を組み合わせています。
菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念とGIを3勝。
瞬間的な切れ味ではなく、早めに動いて長く伸び続ける。
「奇跡」が偶然ではなく、自分の得意なロングスパートから生まれるというのが面白いところです。
No.57 タップダンスシチー
キャッチコピー:これがオレ達の走りだ。
ジャパンカップでは後続を寄せ付けず9馬身差の圧勝。
宝塚記念も制し、自分から積極的にレースを動かす競馬でファンを魅了しました。
「私」ではなく「オレ」。
しかも「オレ達」。
タップダンスシチー自身の豪快さだけでなく、佐藤哲三騎手との人馬一体のイメージまで感じさせるコピーです。
No.58 キングカメハメハ
キャッチコピー:大王、降臨。
「カメハメハ大王」に由来する馬名。
NHKマイルCを圧勝し、続く日本ダービーもレコードで制しました。
「キング=王」ではなく「大王」。
馬名そのものを生かしつつ、突然競馬界の頂点へ現れた圧倒的な存在感を「降臨」の二文字で表現しています。
No.59 ゼンノロブロイ
キャッチコピー:王道の覇者。
2004年秋、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念を3連勝。
古馬王道路線の秋GIを完全制覇しました。
「王道を走った馬」ではなく、その王道をすべて勝ち切った「覇者」。
実績を非常にストレートに表現したコピーです。
No.60 ディープインパクト
キャッチコピー:一着至上主義。
2005年夏の制作時点で、ディープインパクトは皐月賞、日本ダービーを含む5戦5勝。
まだ菊花賞を勝って三冠馬になる前です。
それでもすでに「一着至上主義。」
勝利ではなく、あえて「一着」と表現しているところが印象的です。
その後、無敗の三冠馬となったことを知る現在の視点ではさらに完成された言葉に見えますが、制作時点ですでにこれを掲げていたことに、このコピーのすごさがあります。
No.61 シーザリオ
キャッチコピー:その日、彼女は二つの国の女王となった。
日本のオークスを制したシーザリオは、アメリカへ遠征。
アメリカンオークスを圧勝しました。
日本のオークス馬が、アメリカの「オークス」も勝つ。
まさしく日本とアメリカ、「二つの国の女王」。
競走実績を物語のような一文にしたコピーです。
No.62 ハーツクライ
キャッチコピー:進化する王者、世界の主役。
ディープインパクトを有馬記念で破ったハーツクライ。
その後ドバイシーマクラシックを制し、世界へその強さを証明しました。
国内GI初制覇が4歳暮れだった遅咲きの馬が、そこから急速に強くなり世界へ。
だからこそ「完成した王者」ではなく、「進化する王者」なのでしょう。
No.63 メイショウサムソン
キャッチコピー:走るごとに強く、勝つごとに逞しく。
皐月賞、日本ダービーを制した二冠馬。
派手な瞬発力で一瞬にして抜け出すタイプというより、力強く競り合って勝つ姿が印象的でした。
「強く」と「逞しく」。
レースを経験するたびに成長していく、たたき上げの王者というイメージによく合います。
No.64 ダイワメジャー
キャッチコピー:速さと強さの理想、才能と努力の結実、未踏の頂点に君臨。
皐月賞を勝った後、喉の疾患に苦しみながら復活したダイワメジャー。
天皇賞(秋)、マイルCSなどを制し、再びトップホースへ返り咲きました。
生まれ持った「才能」だけではない。
困難を乗り越える「努力」があって再び頂点へ。
長いコピーだからこそ、ダイワメジャーの復活まで含めた競走生活を表現できています。
No.65 ウオッカ
キャッチコピー:その強さに、心酔。
2007年、日本ダービー制覇。
牝馬によるダービー優勝は64年ぶりという歴史的快挙でした。
「牝馬なのに強い」といった説明をあえて付けず、ただ「その強さ」に酔いしれる。
性別という枠を飛び越えて、一頭の強い競走馬として称えているところがウオッカらしいコピーです。
No.66 アドマイヤムーン
キャッチコピー:世界が見上げた月。
「ムーン=月」という馬名を生かしたコピー。
ドバイデューティーフリーを制し、日本国内だけでなく世界で実力を証明しました。
人々が空の月を「見上げる」ことと、世界がアドマイヤムーンという競走馬に注目することを重ねています。
No.67 ダイワスカーレット
キャッチコピー:明日も、緋色の風が吹く。
「スカーレット=緋色」。
桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯を勝ち、牡馬相手の有馬記念でも好走。
先行して押し切る競馬で、デビュー以来一度も2着を外さない驚異的な安定感を誇りました。
緋色の風が「今日だけ」ではなく「明日も」吹く。
走るたびに崩れないダイワスカーレットらしさまで感じられます。
No.68 カネヒキリ
キャッチコピー:稲妻の衝撃、再び。
「カネヒキリ」はハワイの雷に由来する馬名。
ジャパンカップダートなどを制してダート王となった後、屈腱炎による長期休養へ。
しかし約2年4か月ぶりに復帰し、再びジャパンカップダートを制しました。
だから単なる「稲妻の衝撃」ではありません。
一度消えたと思われた稲妻が戻ってきた。
「再び。」にこそ、このコピーの核心があります。
No.69 ブエナビスタ
キャッチコピー:まだ見ぬ絶景を求めて。
「Buena Vista」はスペイン語で「素晴らしい景色」「絶景」を意味します。
阪神JF、桜花賞、オークスを制した時点ですでに牝馬の頂点。
それでも競走生活は続いていく。
馬名の意味である「絶景」と、さらに先の大舞台を目指す姿を組み合わせたコピーです。
No.70 アパパネ
キャッチコピー:可憐な翼を、大きく広げて。
「アパパネ」はハワイに生息する赤い鳥の名前。
阪神JFを勝ち、2010年には牝馬三冠を達成しました。
鳥の名前を持つ牝馬が、成長とともに「翼を広げる」。
小さく可憐なイメージから、日本競馬史に残る大きな存在へ成長していく姿を表現しています。
No.71 ヴィクトワールピサ
キャッチコピー:届いた祈り、叶った夢
2011年ドバイワールドカップ。
東日本大震災から間もない時期、日本から遠く離れたドバイでヴィクトワールピサが優勝しました。
日本調教馬として史上初のドバイワールドカップ制覇。
単なる海外GI勝利以上の意味を持った瞬間だったからこそ、「祈り」「夢」という言葉が選ばれたのでしょう。
No.72 オルフェーヴル
キャッチコピー:黄金色の芸術
「オルフェーヴル」はフランス語で金細工師。
父はステイゴールド。
そして毛色は栗毛。
「黄金色」という言葉には、馬名、血統、馬体のイメージが幾重にも重なります。
三冠レースで見せた圧倒的な走りを単なる強さではなく「芸術」と表現したところにも、オルフェーヴルの特別感があります。
No.73 ジェンティルドンナ
キャッチコピー:三冠馬の遺伝子。
父は無敗の三冠馬ディープインパクト。
その娘ジェンティルドンナも2012年に桜花賞、オークス、秋華賞を制して牝馬三冠を達成しました。
父から娘へ。
牡馬三冠馬の遺伝子を受け継いだ娘が、今度は牝馬三冠馬になる。
これ以上ないほど分かりやすい「三冠馬の遺伝子」です。
No.74 ゴールドシップ
キャッチコピー:黄金の航路
「ゴールド=黄金」「シップ=船」。
馬名を直訳するように「黄金の航路」と表現しています。
皐月賞、菊花賞、有馬記念を制し、一気に世代の頂点へ。
後に予測不能な個性でも愛されることになりますが、制作当時はまさに黄金の航路を突き進んでいる最中でした。
No.75 ロードカナロア
キャッチコピー:その速さ、海を渡る。
国内スプリントGIを制したロードカナロアは香港へ遠征。
香港スプリントを制し、日本調教馬として歴史的な勝利を挙げました。
「ロード」は道、「カナロア」はハワイ神話の海の神。
そして実際に海を渡って世界で勝つ。
馬名のイメージと海外遠征をきれいに結び付けたコピーです。
No.76 メイショウマンボ
キャッチコピー:人馬を繋ぐ情熱のステップ。
オークス、秋華賞、エリザベス女王杯を制したメイショウマンボ。
大舞台で手綱を取ったのは武幸四郎騎手でした。
「マンボ」というダンスを連想させる馬名から「ステップ」。
そこへ馬と騎手を結ぶ「人馬」、勝利へ向かう「情熱」を重ねています。
No.77 ジャスタウェイ
キャッチコピー:世界一の称号、父子の覇道。
天皇賞(秋)で覚醒すると、ドバイデューティーフリーを圧勝。
国際的なレーティングで世界トップの評価を受けました。
父はハーツクライ。
ハーツクライ自身も世界へ挑み、ドバイでGIを制した馬です。
父から子へ受け継がれた世界への道と、「世界一」という評価を組み合わせたコピーです。
No.78 モーリス
キャッチコピー:最強最速の進化伝説
条件戦を走っていた馬が本格化すると、連勝街道へ。
安田記念、マイルCS、香港マイルなどを次々と制しました。
モーリスの特徴は、最初から完成されたスターではなかったこと。
走るたびに強くなり、ついには世界的マイラーへ。
だからこそ「進化」という言葉が重要なのでしょう。
No.79 ストレイトガール
キャッチコピー:遅れてきた、シンデレラストーリー。
若い頃からエリート街道を歩んだ馬ではありません。
条件戦から少しずつ階段を上り、5歳以降に本格化。
そして6歳でヴィクトリアマイルとスプリンターズSを制しました。
遅咲きの牝馬がついにGIの舞台で主役になる。
まさしく「遅れてきたシンデレラ」です。
No.80 ロゴタイプ
キャッチコピー:勇往邁進。終わらない夢。
朝日杯FS、皐月賞を制した後、長く勝利から遠ざかったロゴタイプ。
それでもGI戦線へ挑み続け、2016年安田記念で約3年2か月ぶりの勝利。
「勇往邁進」は、恐れることなく目的へ向かって進むこと。
早熟のGI馬で終わらず、何度敗れても走り続けたロゴタイプだからこそ「終わらない夢」なのでしょう。
No.81 キタサンブラック
キャッチコピー:そして、みんなの愛馬になった。
このコピーで重要なのは、最初の「そして」でしょう。
キタサンブラックの馬主は、演歌界の大御所・北島三郎さん。
つまり、もともとは文字通り「北島三郎の愛馬」でした。
デビュー当初から超エリートとして注目された馬ではありません。それが菊花賞を勝ち、天皇賞(春)を勝ち、武豊騎手とのコンビでも活躍を重ねる。
気付けば「北島三郎さんの馬」という枠を超え、競馬ファン全体が応援する存在になっていました。
一人の馬主の愛馬だった馬が、
そして、みんなの愛馬になった。
「そして」の一言に、それまでの物語が詰まっています。
No.82 オジュウチョウサン
キャッチコピー:超えていく、王者。
障害GIを次々と制し、絶対王者となったオジュウチョウサン。
しかし、この馬が超えたのは障害競走の記録だけではありません。
障害馬として異例の人気を獲得し、後には平地競走へ挑戦。有馬記念にも出走しました。
障害競走と平地競走、記録、そして競馬ファンの関心というさまざまな「壁」を超えていく。
だから「超えた王者」ではなく、現在進行形の「超えていく、王者。」なのでしょう。
No.83 アーモンドアイ
キャッチコピー:瞳に夢を。
「アーモンドアイ」は美しい目の形を表す言葉。
その馬名にある「アイ=瞳」を使ったコピーです。
2018年に牝馬三冠を達成し、ジャパンカップでは驚異的なレコードを記録。
見る者の「瞳」に、次はどんな走りを見せるのかという「夢」を映す。
馬名とファンの期待をきれいにつないだ言葉です。
No.84 リスグラシュー
キャッチコピー:ターフに咲く、大輪の花。
このコピーは、リスグラシューの成長物語だけを見ると半分しか意味を捉えられません。
「Lys Gracieux」という馬名は、フランス語で「優美な百合」を意味します。
つまり、もともと「花」を名前に持つ馬です。
若い頃からGIで何度も好走しながら、なかなか頂点には届かなかったリスグラシュー。
それが年齢を重ねて本格化し、宝塚記念を制覇。オーストラリアのコックスプレートも勝ち、最後には有馬記念を圧勝しました。
「優美な百合」という名を持つ少女が、競走生活の最後に世界レベルの名牝へ成長する。
まさしくターフに咲いた「大輪の花」。
馬名と遅咲きの競走人生、その両方を理解すると一段と味わい深くなるコピーです。
No.85 フィエールマン
キャッチコピー:時代を跨ぐ気高き戦士。
フィエールマンは菊花賞を制した後、天皇賞(春)を連覇。
その天皇賞(春)の一度目は2019年。
平成最後のJRA・GIでした。
そして翌2020年、令和となってから再び天皇賞(春)を勝利。
平成と令和、二つの時代をまたいで同じGIを制したことが、「時代を跨ぐ」という言葉に重なります。
長距離王者らしい品格を「気高き戦士」と表現したのでしょう。
No.86 デアリングタクト
キャッチコピー:夢はきっと叶う。
2020年、桜花賞、オークス、秋華賞を無敗で制覇。
史上初となる無敗の牝馬三冠を達成しました。
デアリングタクトは超高額取引馬ではなく、募集価格も決して高い馬ではありませんでした。
そんな一頭が誰も成し遂げたことのなかった偉業へ到達する。
競馬には血統や価格だけでは決まらない夢がある。
非常にストレートな「夢はきっと叶う。」という言葉だからこそ、その物語に似合います。
No.87 コントレイル
キャッチコピー:空に描く衝撃の軌跡。
「コントレイル(Contrail)」は飛行機雲。
父は「ディープインパクト=深い衝撃」。
そしてコントレイル自身は父に続いて無敗のクラシック三冠を達成しました。
「空に描く」は飛行機雲。
「衝撃」は父ディープインパクト。
「軌跡」は無敗で三冠へ進んだ競走生活。
馬名、父、実績の三つを一文にまとめた、非常に完成度の高いコピーです。
No.88 クロノジェネシス
キャッチコピー:夢よ、何度でも。
秋華賞でGI初制覇。
その後、宝塚記念を連覇し、有馬記念も制してグランプリの女王となりました。
それだけで終わらず、世界最高峰の凱旋門賞にも挑戦。
一つ夢を叶えたら、また次の夢へ。
「何度でも」という言葉には、国内GI制覇だけをゴールにせず挑戦を続けるクロノジェネシスの姿が重なります。
No.89 グランアレグリア
キャッチコピー:美しき、速さ。
桜花賞、安田記念、スプリンターズS、マイルCS、ヴィクトリアマイルなどを制覇。
1200mでも1600mでも、圧倒的なスピードと末脚を発揮しました。
「速い」だけなら多くの名馬に使える言葉です。
しかしグランアレグリアの走りには、一瞬で他馬を置き去りにするような鮮やかさがありました。
余計な説明を加えず、「美しき、速さ。」
その簡潔さが、むしろ彼女の圧倒的な能力を際立たせています。
No.90 ラヴズオンリーユー
キャッチコピー:君だけが、見た世界。
無敗でオークスを制したラヴズオンリーユー。
その後は日本国内にとどまらず、香港、ドバイ、アメリカへ。
2021年にはブリーダーズカップ・フィリー&メアターフを制し、日本調教馬として史上初のブリーダーズカップ勝利を成し遂げました。
さらに香港カップも制覇。
日本、香港、ドバイ、アメリカ。
これほど世界中を駆け巡り、日本競馬がそれまで見たことのない景色を見せた牝馬は稀です。
「みんなが見た世界」ではなく、
君だけが、見た世界。
日本馬として初めて到達した場所があるからこそ、「君だけ」という言葉が強く響きます。
No.91 エフフォーリア
キャッチコピー:時代の継承
2021年皐月賞を無敗で制覇。
天皇賞(秋)では三冠馬コントレイルを、有馬記念ではグランプリ女王クロノジェネシスを破りました。
前の時代を代表する名馬たちを、若い3歳馬が直接倒して頂点へ立つ。
それは単なるGI勝利ではなく、競馬界の主役交代そのもの。
「時代の継承」という言葉が非常に分かりやすく当てはまります。
No.92 ソダシ
キャッチコピー:無垢な未来へ
真っ白な馬体。
白毛馬ソダシは阪神JFを制し、白毛馬として世界初の芝GI勝利を達成。
さらに桜花賞も制しました。
「無垢」という言葉から連想されるのは、何にも染まっていない白。
それはソダシの白毛そのものであると同時に、これまで前例のなかった白毛馬の新しい歴史にもつながります。
誰も歩いたことのない「未来」へ進む純白の馬。
見た目と実績の両方を表したコピーでしょう。
No.93 タイトルホルダー
キャッチコピー:その名は、タイトルホルダー
「タイトルホルダー」は、そのまま「タイトル保持者」という意味。
そして実際に菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念と大きなタイトルを次々と獲得しました。
名前がそのまま競走成績になってしまったような馬。
だから余計な言葉はいらない。
「その名は、タイトルホルダー」。
馬名そのものを最大限に生かしたコピーです。
No.94 イクイノックス
キャッチコピー:無双の閃光。
天皇賞(秋)、有馬記念を制し、ドバイシーマクラシックでは世界を驚かせる圧勝。
その後も宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップとGI連勝を伸ばしていきました。
イクイノックスの強さは、接戦を何とかものにするというより、一瞬の加速で勝負を決めてしまうようなもの。
「閃光」という言葉が、そのスピード感を表しています。
そして「無双」。
世界ランキング1位にまで到達した馬に対して、これほど分かりやすい二文字もありません。
No.95 ソングライン
キャッチコピー:その走りが、新たな道になる。
安田記念連覇、ヴィクトリアマイル制覇。
牝馬ながら東京のマイルGIで圧倒的な実績を残しました。
さらに海外にも挑戦し、国内の牝馬路線だけに収まらない競走生活を送りました。
「ソングライン」という馬名には、祖先から子孫へ受け継がれていく歌や物語というイメージもあります。
一頭の牝馬が切り開いた道が、その後に続く馬たちの新しい道になる。
そんな未来まで感じさせるコピーです。
No.96 リバティアイランド
キャッチコピー:君には冠がよく似合う。
2023年、桜花賞、オークス、秋華賞を制して牝馬三冠を達成。
「冠」はもちろん「三冠」の冠。
同時に、女王が頭に戴く「王冠」にも重なります。
圧倒的な末脚で牝馬三冠を完成させたリバティアイランド。
三つの冠を手にした女王に「冠がよく似合う」と語りかける、シンプルながら二重の意味を持つコピーです。
No.97 ドウデュース
キャッチコピー:ともに、見る夢。
ドウデュースの物語を語るなら、武豊騎手と馬主・松島正昭氏の存在は外せません。
松島氏は武豊騎手への強い思いを持つ馬主として知られ、その大きな夢の一つが武豊騎手と凱旋門賞を勝つこと。
ドウデュースは武豊騎手とのコンビで朝日杯FS、日本ダービーを制し、海外にも挑戦しました。
そして武豊騎手が負傷で騎乗できない時期を経て、再びコンビを組んだ有馬記念でも勝利。
馬だけが見る夢ではない。
騎手だけでも、馬主だけでも、ファンだけでもない。
人と馬が、
ともに、見る夢。
ドウデュースを取り巻く人々まで含めて初めて完成するコピーではないでしょうか。
No.98 レモンポップ
キャッチコピー:砂上の果実に魅せられて。
「レモンポップ」という名前から連想される「果実」。
そして、この馬が頂点を極めた舞台は「砂上」、つまりダートでした。
フェブラリーS、南部杯、チャンピオンズCなどを制し、日本のダート界を代表する存在へ。
特に南部杯では圧倒的なパフォーマンスを見せ、チャンピオンズCも連覇しました。
「砂上の王者」のような直接的な言い方ではなく、あえて「果実」と表現しているのがポイント。
砂の上で実った「レモン」という果実。
そして、その走りに競馬ファンが「魅せられて」いく。
馬名、ダートという舞台、ファンからの人気を美しい一文にまとめたコピーと考えられます。
ヒーロー列伝・番外編
JRAのヒーロー列伝には、通常のNo.1~98とは別に扱われるポスターも存在します。
ハギノカムイオー
キャッチコピー:ヒーローing
「華麗なる一族」の血を引き、高額馬としてデビュー前から大きな注目を集めたハギノカムイオー。
「ヒーロー」ではなく「ヒーローing」。
これからヒーローになっていく途中という意味を感じさせる、時代を感じるコピーです。
サイレンススズカ
キャッチコピー:先頭を、どこまでも先頭を。
サイレンススズカほど、この言葉を説明する必要のない馬も少ないでしょう。
大逃げ。
他馬を引き離して先頭を走り、そのままさらに前へ行こうとする。
1998年天皇賞(秋)で悲劇的な最期を迎えた後に制作された追悼ポスターです。
「速かった」ではなく、
「先頭を、どこまでも先頭を。」
最後まで先頭を走り続けたサイレンススズカへの願いにも、祈りにも聞こえる言葉です。
エルコンドルパサー
サンクルー大賞優勝を記念して制作されたポスターも存在します。
通常のヒーロー列伝とは別枠ですが、エルコンドルパサーはその後の凱旋門賞でも2着。
日本馬が世界最高峰へ本気で手を伸ばした時代を象徴する一頭となりました。
キズナ
第80回日本ダービー開催を記念したポスターが制作されています。
キズナは武豊騎手を背に2013年日本ダービーを制覇。
その後フランスへ遠征し、ニエル賞を勝って凱旋門賞にも挑戦しました。
こちらも通常のナンバリングされたヒーロー列伝とは異なる特別な作品です。
ヒーロー列伝のキャッチコピーは、なぜ記憶に残るのか
98頭を並べてみると、ヒーロー列伝のコピーは単純に「その馬は強かった」と表現しているわけではないことが分かります。
オグリキャップの、
「ありがとう。」
トウカイテイオーの、
「帝王は、皇帝を超えたか。」
ステイゴールドの、
「愛さずにいられない。」
キタサンブラックの、
「そして、みんなの愛馬になった。」
どれも、競走成績だけを見て考えられる言葉ではありません。
馬名。
血統。
騎手や馬主との関係。
ライバル。
挫折。
復活。
そして、その馬を見ていた競馬ファンの感情。
それらを短い言葉の中に凝縮しているからこそ、何十年経っても記憶に残るのでしょう。
また、馬名を利用したコピーも数多くあります。
ヤマニンゼファーの「そよ風」。
ブエナビスタの「絶景」。
アドマイヤムーンの「月」。
カネヒキリの「稲妻」。
オルフェーヴルの「黄金」。
リスグラシューの「花」。
コントレイルの「空」。
レモンポップの「果実」。
意味を知ったうえでもう一度コピーを見ると、最初に見たときとは違った印象になるものもあります。
あなたにとって一番好きなヒーロー列伝は?
最強馬が、そのまま一番心に残る馬とは限りません。
圧倒的な強さに魅了された馬。
何度負けても応援した馬。
怪我から帰ってきた馬。
最後のレースが忘れられない馬。
競馬ファンそれぞれに、自分だけの「ヒーロー」がいるはずです。
1981年、第1号のヒーロー列伝に使われた言葉は、
「僕のあいつも、いつの日かヒーロー。」
でした。
98頭の歴史を振り返ってからこの言葉を見ると、ヒーロー列伝というシリーズが40年以上続いてきた理由が、少し分かるような気がします。
これからも新しい名馬が現れ、新しいヒーロー列伝が生まれていくでしょう。
当ページでも新たなヒーロー列伝が制作された際には、随時追加していきます。
※当ページのキャッチコピーの意味・背景について、JRAから公式な解説が発表されていないものは、競走成績、馬名の由来、制作時点の状況などをもとに独自に考察しています。
JRAポスター ヒーロー列伝コレクション